Butter
柚木麻子さんの「Butter」という小説を読んでいる。
表紙は金色に輝くとろけたバターが金髪のように描かれ、その女性は黒服に真珠のネックレスを身に纏っている。まるで喪服のようだ。
128ページ。
梶井は里香に「セックスした直後に食べろ」とある塩バターラーメン屋を指定した。
なぜラーメンなのかと問うと梶井は
「セックスの後て身体がからっぽになるじゃない。だから、暑くてこってりした汁気たっぷりのもので、飢えた自分を満たしてあげたくなるのよ。言ったでしょ、好きな時に好きなだけ食べることで、感覚は研ぎ澄まされていくって」
と語る。
私は自分の過去を思い起こした。
この記憶をもう「遠い」と形容して良いのか、
しかしはっきりと参考にすべき記憶はどこだったのかは曖昧だった。
それでも、私が今得ている経験として思うことは「セックスの後はからっぽ」だっただろうか?ということ。
その行為の終わり側、私は10割と言って良いほど妥協していた記憶がある。
これは私の人生経験、恋愛経験、性愛的経験が浅いことを示すのかもしれないが、
その時のパートナーと行為をして、果てたことはない。
終わるとすればパートナーが果てたタイミングだし、それも難しければ疲れたタイミングに終える。
相手を満足させられない、という思いを抱かせるのも申し訳なく思うものの、
私自身その行為をするまでコンディションを整えた結果がこうなのである。
過去に、付き合っていたパートナーに振られ、このブログに思いを吐露した。
今の私は完全に立ち直っているかと問うてしまえばNOになるだろう。
YESと答えるのはそれこそまっさらな状態でなければ不可能と思える。
NOの範囲が限りなく広く、一度YESに行ければそれは揺らぐことのない位置。
まぁ、そこに行けるのはあと1年ほど必要なのではないか、と思う。
再び恋に落ちればその速度は速まるのかもしれないけれど。
恋愛の速度調整に関してはまたいつか。
ほぼ毎日見ていたYouTuberの一人が、彼自身の推しである一人の女性アイドルと結婚をした。
オレンジと水色に彩られ、彼の言葉を借りるなら「完璧」な仕上がりだった。
その結婚動画のメイキング内での彼が彼女、妻を見る目たるや。
私もありがたいことに、今まで付き合ったパートナーから似た扱いを受けさせてもらったのだが、男性側が女性側にこれでもかというほどに惚れている構図はどうにも素晴らしい。
これからも生活は続いていくし結婚というものはまた別物であろうが、
ハッピーエンドで殴られる感覚が一番するのは、私にとってはこの構図だ。
単純に羨ましくも思った。
今の自分が得たくても得られない形のないもの、
幸せのひとつであるそのくらくらする熱に帯びた二人に感動した。
私はしばし、文学に触れ文章を叩き出す方へ向かう。
今の私が恋愛を求め、生涯を共にするパートナーを求めるとすれば、
外に出るには結局文学と共にあるべきなのかれしれないと思ったのだ。
本を読む時間は一番心地よい孤独の時間。
一番の現実逃避。
そんな中で私が大きく花開きたいと思う夢に、一つ二つほど理由が増えただけ。
私は次の恋愛までに、恋愛をしても文学から離れず文章を書き続けられる私でありたいものだ。
その私を、じんわりとバターが溶けるように育てて、傍にいたいものだ。
私の作品は、私が一番心待ちにしている。